オーシャンズ8 75点
「#Mee too時代の金字塔的作品、なの?」
やりたいことはわかるけれど、あまりに葛藤や対立がないストーリー。これが「オーシャンズ」シリーズだからそうなのか(過去作品もそういう傾向はある)、この作品だからそうなのかは判断が別れるけれど、かえってステロタイプに感じられて、そこまで楽しめなかった。
女優陣の「多様性」も、淡々と描かれるため描き込みが少ないというか、キャラクタとして確立するまでに至らない感じ。主演のサンドラ・ブロック以外では、唯一アン・ハサウェイ演じる女優くらいか。ケイト・ブランシェットは最近何を演じてもケイト・ブランシェット様だし……
「ブラックパンサー」と並べたてて金字塔的作品と評価する声もあるけれど、正直そこまでの作品ではないと思いました。
でも、こういうのが今の時代の感覚なのかもしれないし、それについていけてないのはむしろ自分なのか、とも思わせる作品。そういういみではお薦めです。
2018年上半期映画ベストテン
1位 レディ・バード kazemachiroman.hatenablog.com
2位 シェイプ・オブ・ウォーター kazemachiroman.hatenablog.com
3位 15時17分、パリ行き kazemachiroman.hatenablog.com
4位 リメンバー・ミー kazemachiroman.hatenablog.com
5位 君の名前で僕を呼んで kazemachiroman.hatenablog.com
6位 スリー・ビルボード kazemachiroman.hatenablog.com
7位 アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー kazemachiroman.hatenablog.com
8位 レディ・プレイヤー1kazemachiroman.hatenablog.com
デッドプール2 85点
「前作以上に"ライアン・レイノルズ"が表現された爽やかな快作」
「完成度」という意味では、前作に譲るけれど、娯楽としてとても楽しめる作品だった。よい意味で主役(脚本もやっている)のライアン・レイノルズの「いいヤツ」な人柄がとてもよく反映され、荒唐無稽で洒脱なんだけれど奥底はたいへんマジメなメッセージのある内容。
冒頭からダニエル・クレイグ主演の「007」のオープニング・タイトルのパロディで爆笑させられる。ことあるごとにフィーチャーされるa-haの"Take On Me"は、前回の"Careless Whisper"から続く'80年代ヒット曲つながりなんだけれど、かの有名なMVの「本歌取り」的な使われ方がされていて、「アトミック・ブロンド」で’80年代ロックを駆使したデヴィッド・リーチ監督らしい技巧的な音楽の使われ方だと思った。
「”X-MEN"はポリティカル・コレクトネスに反するから”X-Force”にしよう」という科白なども力の抜け具合が最高。
ラストの「グリーン・ランタン」の脚本を見てニヤける(昔の)ライアン・レイノルズ自身を撃つシーンは、自虐ネタに爆笑させられる一方で、過去の自分との決別をあらわしているようにも思え、清々しい気分が残る。
ちぐはぐな脚本とかアクションと物語のスケールのアンバランスさとか、確かに指摘すればキリがないけれど、スカッと爽やかで何重にも楽しめ、ライアン・レイノルズが好きになる作品。お薦めです。
レディ・バード 95点
「青春時代がいっぱい詰まったジュブナイルの傑作」
舞台はカリフォルニア州都サクラメント。ドラマ「メンタリスト」のCBS本部所在地だが、LAやサンフランシスコなどとは異なる農業都市らしい。
そんな「田舎臭い」街に象徴された、青春時代特有の閉塞感と「何者かになる」アンビションを抱えたハイティーンの主人公を、ハマり役としかいいようのないシアーシャ・ローナンが好演している。
医療従事者で厳格な母を中心に、UCアーバインでMBAをとりながらも失業してしまう父、子供を諦めていた両親が養子にとった(メキシコ系の?)兄と居候のそのガールフレンド、という現代的ながらもこの手のドラマ(最近では「シング・ストリート 未来へのうた」 「スイート17モンスター」など)に典型的な家族構成や家庭環境という設定。
物語はほぼ想定通りに順当に進むんだけれど、コミカルで胸が痛くて「あーあるある」という、この手のジャンルのすべてが完璧に網羅されており、非常に完成度が高い。
レディ・バードが一枚絵のような家々を歩きながらカットを切り替えるシーンを多用するなど、サクラメント(とニューヨークの)家や風景を手際よく紹介していく撮影・編集も素晴らしく、映画の語り口によくマッチしていてよい。
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」のルーカス・ヘッジスや「君の名前で僕を呼んで」のティモシー・シャラメもイケメンの芸達者振りを存分に発揮しており、素晴らしい。
コミカルで胸が痛く、最後には爽快な気分になる素晴らしい作品でした。
お薦めです。
ファントム・スレッド 75点
「エキセントリックな人々の歪んだ愛情=支配の物語」
「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」や「ブギーナイツ」のポール・トーマス・アンダーソン監督とアカデミー主演男優賞3回受賞のダニエル・デイ=ルイスが組んだ異色作。
神経質でアーティスティックなデザイナーとアンビシャスなウエイトレスの奇妙な恋愛の物語。
美しい映像や造作と俳優陣の演技が素晴らしいけれど、主人公が見出すヒロインの「美」にどうしても感情移入できず、よく構成された物語展開にも物足りなさが残ってしまった。
それでも、ダニエル・デイ=ルイスのキャラクターがとてもかわいらしいので、お薦めです。
フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法 85点
「カラフルな映像と子供の愛らしさが満開の、押しつけがましさのない社会派映画」
貧困層の「プロジェクト(公営住宅)」化している、フロリダのカラフルなモーテルを舞台にした物語。
前科などの事情があって公的支援が受けられない貧困層が週借りで家賃を支払い、たいていは小さい子供を抱えながら、文字通りの「その日暮らし」を余儀なくされている。
そんな悲惨な状況にあっても、子供たちはあくまで活発でその表情は活き活きとしており、希望を感じさせる。
もちろん「社会派」的な物語なんだけれど、子役達の演技が素晴らしく、悲惨な状況とのコントラストが、カラフルな映像と相俟って自然と浮かび上がるように構成されており、押しつけがましさを感じない。
解像度の低いiPhoneの映像に切り替わるところから、「真夏の魔法」はとけてしまうのか、はたまたそれは「魔法の国」の始まりなのか……
重いテーマが苦手な人にでも、お薦めです。
ショーン・ベイカー監督の前作、全編iPhone撮影のインデペンデント映画「タンジェリン」。今回も「iPhone撮影」がキーになっている。
ランペイジ 巨獣大乱闘 90点
「大破壊でスカッと大満足の正統派怪獣映画」
秘密の化学実験の失敗により、普通の動物が怪物化して暴れ回るというシンプルな作品。
破壊の限りを尽くす3頭の巨獣がスカッと気持ちがよいし、迫力がある。悪役(「ウォッチメン」のシルクスペクター2を演じたマリン・アッカーマン*1)や軍のわかりやすい馬鹿さもこういう作品には不可欠であり、コメディリリーフ的によい効果を与えている。
巨獣に立ち向かうロック様もとてもよく、最後はお決まりの展開だが、思わず感動してしまう。各方面絶賛の理由がよくわかる作品だった。お薦めです。
*1:ちなみに、捜査官ラッセル役はコメディアンを演じたジェフリー・ディーン・モーガン