kazemachiroman’s diary

kazemachiromanのお薦め

グレイテスト・ショーマン 75点

グレイテスト・ショーマン (字幕版)

 

 「人物造形が薄っぺらい一方で音楽が大袈裟なので、少しつらい」

 

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ご都合主義的なストーリーはよいにせよ、やはり100分強に詰め込んだためか、個々のキャラクタの描き込みや感情移入の仕掛けが不十分なまま、多数(もしくは一対一)での大合唱ミュージカル・シーンに回収されるので、圧倒はされるが今ひとつ爽快感がなかった。

 

主人公のバーナムがすべてを失ってバーで落ち込むシーンも、落ち込んでいる時間はわずか数十秒程度で「仲間」達がすぐに励ましに来る。焼けてしまった劇場の再建が見通せないときでも、パートナーがしっかりお金を貯めていてくれている(早く言えよ……)、などダウンサイドの葛藤や失敗のどん底が描かれないので、ストーリーとしてのアップダウンがなく、アップテンポの大合唱に乗り切れない。

  

名曲といってよいであろう "This Is Me" にしても、唄われる場面は主人公が体裁を気にする程度の「葛藤」しかないのに(例えば、周りの上流階級に蔑まれたり貶められたりしたわけではない)、集団で自己主張を全面に押し出しながら部屋に押し入っていく場面で使われるため、カタルシスが生じない。(現に自己主張の「対象」たる上流階級の人々は突然のことに驚くだけ)

 

事前に公開されていた、このオーディション場面での歌唱のほうが、キアラ・セトルのアーティストとしての自己主張が歌詞の内容にマッチして、聴衆をも巻き込んで一体化しており、圧倒的に感動的だ。(これを観てすごく期待して映画を観たので、あの場面ではがっかりだった)


The Greatest Showman | "This Is Me" with Keala Settle | 20th Century FOX

 

また、曲も群舞シーンもどれも同じように感じられて、「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」の飛行場のシーンのような、キャラクタの「多様性」を活かした演出があったらよりよかったのに、と感じた。

 

世間的な評判がとても高いし、上記のような「引っ掛かり」を感じないままストーリーが腹に落ちればそのまま持っていかれるんだろうけれど、最後までいまいち乗り切れずじまい。でも、ラストの"The show must go on."という科白は、やっぱりシビレましたね。

 

同じ音楽+劇場経営映画なら、「SING/シング」(90点)のほうがお薦めです

 

SING/シング 【通常版】 (字幕版)

SING/シング【通常版】(吹替版)

シング-オリジナル・サウンドトラック