ファントム・スレッド 75点
「エキセントリックな人々の歪んだ愛情=支配の物語」
「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」や「ブギーナイツ」のポール・トーマス・アンダーソン監督とアカデミー主演男優賞3回受賞のダニエル・デイ=ルイスが組んだ異色作。
神経質でアーティスティックなデザイナーとアンビシャスなウエイトレスの奇妙な恋愛の物語。
美しい映像や造作と俳優陣の演技が素晴らしいけれど、主人公が見出すヒロインの「美」にどうしても感情移入できず、よく構成された物語展開にも物足りなさが残ってしまった。
それでも、ダニエル・デイ=ルイスのキャラクターがとてもかわいらしいので、お薦めです。
フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法 85点
「カラフルな映像と子供の愛らしさが満開の、押しつけがましさのない社会派映画」
貧困層の「プロジェクト(公営住宅)」化している、フロリダのカラフルなモーテルを舞台にした物語。
前科などの事情があって公的支援が受けられない貧困層が週借りで家賃を支払い、たいていは小さい子供を抱えながら、文字通りの「その日暮らし」を余儀なくされている。
そんな悲惨な状況にあっても、子供たちはあくまで活発でその表情は活き活きとしており、希望を感じさせる。
もちろん「社会派」的な物語なんだけれど、子役達の演技が素晴らしく、悲惨な状況とのコントラストが、カラフルな映像と相俟って自然と浮かび上がるように構成されており、押しつけがましさを感じない。
解像度の低いiPhoneの映像に切り替わるところから、「真夏の魔法」はとけてしまうのか、はたまたそれは「魔法の国」の始まりなのか……
重いテーマが苦手な人にでも、お薦めです。
ショーン・ベイカー監督の前作、全編iPhone撮影のインデペンデント映画「タンジェリン」。今回も「iPhone撮影」がキーになっている。
ランペイジ 巨獣大乱闘 90点
「大破壊でスカッと大満足の正統派怪獣映画」
秘密の化学実験の失敗により、普通の動物が怪物化して暴れ回るというシンプルな作品。
破壊の限りを尽くす3頭の巨獣がスカッと気持ちがよいし、迫力がある。悪役(「ウォッチメン」のシルクスペクター2を演じたマリン・アッカーマン*1)や軍のわかりやすい馬鹿さもこういう作品には不可欠であり、コメディリリーフ的によい効果を与えている。
巨獣に立ち向かうロック様もとてもよく、最後はお決まりの展開だが、思わず感動してしまう。各方面絶賛の理由がよくわかる作品だった。お薦めです。
*1:ちなみに、捜査官ラッセル役はコメディアンを演じたジェフリー・ディーン・モーガン
モリーズ・ゲーム 75点
ブラックパンサー 85点
「MCUに時代性を持ち込んだ意欲作」
「フルートベール駅で」 「クリード/チャンプを継ぐ男」のライアン・クーグラー監督の意欲作。アフリカ・黒人・女性が大活躍するというメッセージ性や言語・音楽・風俗・衣装・意匠などのアフリカ文化への敬意は充分に理解できるし、時代性という意味でメイクセンスなのは分かるが、 MCU作品のクオリティとしては標準的か。
韓国のカジノでの大立ち回りからカーアクションの展開は素晴らしかったが、後半やや尻すぼみになった印象。これが他のMCU作品を超えて大ヒットしているのだから、僕の感覚よりも世界のほうが進んでいるようで、お薦めです。
トレイン・ミッション 75点
「ジャウム・コレット=セラ×リーアム・ニーソンの鉄板パニック・エンターテインメント」
ジャウム・コレット=セラ監督×リーアム・ニーソン主演のニューロティック・スリラー。
前作「フライト・ゲーム」同様乗物(のりもの)モノだが、電車という半密室ということもありアクション要素が増していてその分興奮度は高い。細かい突っ込みを入れだすとキリがないが、ジャンルものとして開き直って楽しめば、コメディリリーフもあり心地よい快作。
「ジャッジ 裁かれる判事」のヴェラ・ファーミガのキャスティングが絶妙で、よかった。少し鬱々としているときに観るのが、お薦めです。