キングスマン:ゴールデン・サークル 80点
君の名前で僕を呼んで 90点
「美しいイタリアの田舎町の、美しいひと夏の恋愛の物語」
とにかく美しい物語。オリヴァー役のアーミー・ハマーはさすがに年齢的に少し無理のある場面もあったけれど、なんともいえない表情が素晴らしく、演技に説得力があり、エリオ役のティモシー・シャラメは、華奢で繊細な役に完璧にマッチしていた。
内容的にはストレートなひと夏の恋の話なんだけれど、映像の美しさと2人の演技、そしてなんとも優雅なインテリジェンスをまとった夏のイタリアでの生活などが合わさって、現代版のギリシア的優雅さを表現するとこうなりました、という作品。
ギリシア彫刻の話が出てくるけれど、ゲイというのもその優雅さのひとつの要素に過ぎないからこそ、あくまでも自然に展開されるのだろう。想像していた以上に素晴らしい作品でした。東京では連日満席なのも頷けますね。
お薦めです。
ダンガル きっと、つよくなる 85点
「インド映画らしい圧倒的なスポ根エンターテインメント作品」
「きっと、うまくいく」のアミール・カーン演じる主人公と二人の娘の物語は事実をもとにしてはいるけれど、それ以外はフィクション満載で、お話はかなり荒唐無稽というかご都合主義的に進む。
それでも、純粋なエンターテインメントとして笑いあり、涙ありで、スカッと楽しめるボリウッド作品。
ミュージカル・シーンも他のインド映画と比べて控えめながら、よい感じで挿入される。女性の活躍や地位向上に注目した作品だけれど、髪の毛を切ったり男の子と戦わせたりするようなあまりにも常軌を逸したスパルタもあるスポ根物なので、フェミニストには怒られるかな……少し長いけれど、スカッと楽しみたい人にはお薦めです。
レディ・プレイヤー1 90点
「スピルバーグにしかできないエンターテインメントの傑作(と言わざるを得ない)」
スピルバーグにしかできないであろうスターシステム満載の娯楽映画。
デストピア描写に深入りせず、VRに「逃げ込む人々」を(「セカンドライフ」的な)もうひとつの可能性として、むしろ中立的~やや肯定的に描いていると感じた。
ヴァン・ヘイレンの大ヒット曲「ジャンプ」で始まる冒頭から、各所に散りばめられた(’70年代後半~)'80年代の(偏った)カルチャーからの引用は圧倒的で、息付くヒマも無い。情報量が多過ぎて一度観ただけではとてもじゃないがウォーリーを探しきれない。
30代~40代のおじさんにはたまらないエンターテインメントだろう。できれば音響のよい映画館で観るとよいと思う。
文句なしにお薦めです。
リメンバー・ミー 95点
「やっぱりピクサー、完成度の極めて高い美しい作品」
テーマ性、ストーリー構成、アニメーション、音楽、声優の演技、すべてがほぼ完璧に作り上げられて、完全にやられてしまった。
簡潔で割り切ったイントロダクションから、きっちりと伏線が練り込まれた不条理さを抱きつつ物語が展開し、「転」にあたるひとひねりから伏線を一気に見事に回収していく語り口は、何度も「必要十分さ」を検証し尽くしたであろう完成度の高さ。
ピクサーらしく技巧的に過ぎるような気もするけれど、「ズートピア」同様、ここまでやられてしまうと降参。文句なしの傑作。超お薦めです。
なお、同時上映の「アナと雪の女王」の短編は悪くはなかったけれど、日本では少し季節外れだった。
否定と肯定 75点
「レイチェル・ワイズがレイチェルしている、ストレートな作品」
結末がわかっている物語なんだけれど、「オリエント急行殺人事件」同様、特にサプライズもなく淡々と展開されていく。
レイチェル・ワイズは「ナイロビの蜂」の頃からのいつものレイチェル・ワイズで、学者にしてはちょっとエモーショナルに過ぎる演出。
どこか捉えどころのないアンドリュー・スコット(BBC版「SHERLOCK」のモリアーティ教授役や「007 SPECTRE」のC役)の演技はよかった。
テーマについても、オウベイなら切実かもしれないけれど、自分には思想的に少し押し付けがましくて、かえってあまり心に響かなかった。
「トランプ時代」らしい昨今の一連の作品群のなかでも、ストレートな一本。
お薦めです。
アトミック・ブロンド 85点
「本格女性アクションの新たな金字塔、アクション・演技・音楽、三拍子揃った名作」
「ジョン・ウィック」で、ポスト「ボーン」シリーズのアクションを体現してみせた8711のデヴィッド・リーチ監督が、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」での名演が記憶に新しいアカデミー賞女優シャーリーズ・セロンとタッグを組んだ、本格スパイ・アクションもの。
非力な女性ならではのリアルな体技を用いたアクション・シーンはもちろん、「裏切りのサーカス」のような本格エスピオナージもののストーリー展開もよく練られており、一見の価値あり。
ある種充満したエネルギーのある'89年のベルリンの壁崩壊を時代背景に、当時の音楽が効果的に使われ、唸らされる。
OSTはよいんだけれど、これが入っていないのが残念ですね。
パンフレットの宇野維正氏の解説にあるように、これは1981年の曲なんだけれど、1990年のこの曲のサンプリングに使われている曲。最後の場面のテレビ放送で、「サンプリングの是非」に関する話題が出ていて、DJのミックス的に「大きな時代の変化」を暗示していて、実はなかなか深い選曲でもある。
お薦めです。
2017年のベスト8位にランクしました。