レディ・プレイヤー1 90点
「スピルバーグにしかできないエンターテインメントの傑作(と言わざるを得ない)」
スピルバーグにしかできないであろうスターシステム満載の娯楽映画。
デストピア描写に深入りせず、VRに「逃げ込む人々」を(「セカンドライフ」的な)もうひとつの可能性として、むしろ中立的~やや肯定的に描いていると感じた。
ヴァン・ヘイレンの大ヒット曲「ジャンプ」で始まる冒頭から、各所に散りばめられた(’70年代後半~)'80年代の(偏った)カルチャーからの引用は圧倒的で、息付くヒマも無い。情報量が多過ぎて一度観ただけではとてもじゃないがウォーリーを探しきれない。
30代~40代のおじさんにはたまらないエンターテインメントだろう。できれば音響のよい映画館で観るとよいと思う。
文句なしにお薦めです。
リメンバー・ミー 95点
「やっぱりピクサー、完成度の極めて高い美しい作品」
テーマ性、ストーリー構成、アニメーション、音楽、声優の演技、すべてがほぼ完璧に作り上げられて、完全にやられてしまった。
簡潔で割り切ったイントロダクションから、きっちりと伏線が練り込まれた不条理さを抱きつつ物語が展開し、「転」にあたるひとひねりから伏線を一気に見事に回収していく語り口は、何度も「必要十分さ」を検証し尽くしたであろう完成度の高さ。
ピクサーらしく技巧的に過ぎるような気もするけれど、「ズートピア」同様、ここまでやられてしまうと降参。文句なしの傑作。超お薦めです。
なお、同時上映の「アナと雪の女王」の短編は悪くはなかったけれど、日本では少し季節外れだった。
否定と肯定 75点
「レイチェル・ワイズがレイチェルしている、ストレートな作品」
結末がわかっている物語なんだけれど、「オリエント急行殺人事件」同様、特にサプライズもなく淡々と展開されていく。
レイチェル・ワイズは「ナイロビの蜂」の頃からのいつものレイチェル・ワイズで、学者にしてはちょっとエモーショナルに過ぎる演出。
どこか捉えどころのないアンドリュー・スコット(BBC版「SHERLOCK」のモリアーティ教授役や「007 SPECTRE」のC役)の演技はよかった。
テーマについても、オウベイなら切実かもしれないけれど、自分には思想的に少し押し付けがましくて、かえってあまり心に響かなかった。
「トランプ時代」らしい昨今の一連の作品群のなかでも、ストレートな一本。
お薦めです。
アトミック・ブロンド 85点
「本格女性アクションの新たな金字塔、アクション・演技・音楽、三拍子揃った名作」
「ジョン・ウィック」で、ポスト「ボーン」シリーズのアクションを体現してみせた8711のデヴィッド・リーチ監督が、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」での名演が記憶に新しいアカデミー賞女優シャーリーズ・セロンとタッグを組んだ、本格スパイ・アクションもの。
非力な女性ならではのリアルな体技を用いたアクション・シーンはもちろん、「裏切りのサーカス」のような本格エスピオナージもののストーリー展開もよく練られており、一見の価値あり。
ある種充満したエネルギーのある'89年のベルリンの壁崩壊を時代背景に、当時の音楽が効果的に使われ、唸らされる。
OSTはよいんだけれど、これが入っていないのが残念ですね。
パンフレットの宇野維正氏の解説にあるように、これは1981年の曲なんだけれど、1990年のこの曲のサンプリングに使われている曲。最後の場面のテレビ放送で、「サンプリングの是非」に関する話題が出ていて、DJのミックス的に「大きな時代の変化」を暗示していて、実はなかなか深い選曲でもある。
お薦めです。
2017年のベスト8位にランクしました。
勝手にふるえてろ 90点
15時17分、パリ行き 95点
「真実の圧倒的な説得力を、驚きのキャスティングと演出で証明した金字塔的作品」
ごく普通の人間(たち)が英雄になる話、と言ってしまうと「ハドソン川の奇跡」と同じだけれど、前作では限定的だった主人公(サリー)自身の描写(人格やキャリア)が、3人の生い立ちや欧州旅行パートを通して描かれるため、「我々の隣にいる若者」というところのリアリティが増しているとともに、伏線となるパズルのピース(救護知識、柔術、など)が散りばめられていて、しっかりとストーリーを形作っている。
トレーラーはややミスリーディングで、クリント・イーストウッド監督が描きたかったのは、むしろ「英雄的行為」のタネはともすれば退屈な日常の中に埋もれている、ということではないだろうか。しかし、実際の関係者でちゃんと映画になってしまうとは、驚き。
いろいろな意味で実験的な作品だけれど、素晴らしいかたちで結実していると思う。
お薦めです。
ジャスティス・リーグ 85点
「MCUとは一味違ったDCEUらしさがよく出た映画になっていて、ひと安心」
これまでの暗くて陰鬱なイメージのDCEU作品に通じていた、ザック・スナイダーらしい暗くて派手な演出を、引き継いだ「アベンジャーズ」のジョス・ウェドンがテンポよく処理しており、ヒーローらの活躍が格段にわかりやすくなっていた。
スローモーションを多用する演出も、フラッシュというキャラクターにより合理的に見せられるため、それほどくどく感じなかった。
MCUの「アベンジャーズ」や「シビル・ウォー」ほど「お見事」と言えるような連携プレーは見られなかったけれど、役割分担が合理的で総じてよいアクションシーンだった。しかし、やっぱりスーパーマン強過ぎ。
ワンダーウーマンやハーレイ・クインなど魅力的な女性キャラクター頼みだったDCEUだけれど、ここにきてようやく期待が持てるようになってきましたね。お薦めです。
これまでのDCEUシリーズ
今後公開予定の作品
2018年12月21日「アクアマン」
2019年「シャザム/キャプテン・マーベル」
2019年「ワンダーウーマン2」
2020年「サイボーグ」
2020年「グリーンランタン・コァ」